雨の指の

文章の練習。チェコを中心に、映画、美術、音楽のこと。

Paavoharju/パーヴォハルユ - 冬と憂鬱と北欧アンビエント

プラハにも本格的な冬が到来した。雪が降り、トラムが止まり、街の木々が凍りつく。とにかくまったく日が射さないのが瀬戸内育ちの人間としてはつらく、11月中旬ぐらいからひどく憂鬱な気分で日々を過ごしていた。その時延々と聞いていたのが、フィンランドアンビエント・ユニットPaavoharju(パーヴォハルユ)だ。チェコのラジオ放送局Radio Waveを聞いていてたまたま目に留まったユニットで、2008年のアルバムLaulu Laakson Kukista*1をリピートしながらトラムに乗ったり部屋で勉強したりしていた

 

穏やかなノイズの底から、ゆらめく歌声と美麗なメロディが立ちのぼり、薄紙のように丁寧に折り重ねられてゆく。その深々とした音のながれが、ふさいだ気持ちにちょうど耳で聞くトランキライザーのように作用する。

 


Paavoharju - Kevätrumpu - YouTube

アルバムの2曲目。ポップで祝祭的なビートが印象的だ。

 

Paavoharjuはフィンランド南東部の都市サヴォンリンナを拠点として活動するグループで、2005年にアルバムYhä hämärääでデビューした。Lauri AinalaとOlli Ainalaの兄弟を中心に、いまは13人ほどのアンサンブルになっているという。デビュー当時の所属レーベルのプレスリリースには「禁欲的クリスティアニズムのプロジェクト」と書かれているので、もしかしたらコンセプトとしては現代の宗教音楽なのかもしれない。たしかにspiritual*2というか、永続的な存在にささげられた音楽、という感じはする。

 

そんな彼らは2013年に新しいアルバムをリリースしている。ヴィデオがYoutubeで視聴できる。


Paavoharju: Patsaatkin kuolevat (Official video) - YouTube

く、暗い…。2008年の繊細な音の重なりはそのままに、ダークウェイヴというかゴスっぽい方向に展開したように聞こえる。ラッパーであるPaperi Tの参加によるところが大きいのかもしれない。

*1:google翻訳にかけると、英訳としてSongs of Valley Flowersというのが返ってきた。「谷間に咲く花々の歌」といったところだろうか。

*2:関係ないけど、日本語でスピリチュアルというとひどく商売くさく響いてしまうのがいやだな